11月24日、名古屋市中区新栄のコミュニティスペース「パルル」で、みそのわ食堂の店主「ゆみそ」さんが主催する”味噌開き”が行われました。
「みそのわ食堂さん…?」という方は、noteの記事を参照してください。

参加者は今年3月に仕込んだ手前味噌を持ち寄り、熟成中にできた白い膜「産膜酵母」と酒粕を取り除いた後、味噌をゆっくり混ぜ合わせます。やることは淡々としているのに、その場には不思議と柔らかい空気が流れていました。


作業をしていると、自然に言葉が生まれます。

「私、去年はお味噌汁にはせずに、そのまま豆腐や野菜にのせて食べてたの」
「すごくおいしいにおいがする」

香り、色、塩味。ほんのわずかな違いを確かめあうだけで、初対面や関係が浅い人同士でも会話が弾んでいきます。
このイベントには、人と人の壁をやわらかくする「仕掛け」がいくつか組み込まれているように見えました。
➀ 比べることで、最初の会話が生まれる
香りの違い、色の差、熟成の具合。同じ材料で仕込んだ味噌でも、仕上がりは少しずつ違います。そのささやかな違いを確かめ合うことで、自然と会話のきっかけが生まれました。
比較は批評ではなく、単なる観察の共有であるため、批評より角がなく初対面でも入りやすい。
② 手を動かす共同作業は、人の緊張をゆるめる
味噌を混ぜる、すくう、盛る。
手が動くと、場に沈黙が生まれても気まずさがありません。
「会話しなきゃ」という負荷がなくなることでリラックスでき、気持ちが自然な話題へ向かいます。
③ 味の違いを楽しむと、人の違いも受け入れやすくなる
微妙な差を「違い」として楽しむ経験は、人同士の個性を受け入れる感覚を育ててくれます。「あ、これ実家の味に近い」「赤味噌文化で育ったので、この甘さが新鮮」といった会話から、家庭や地域の記憶が自然に語られていきます。


新たなテーマ「次につながる関係」
ここまでで、”味噌開き”では自然に会話が生まれることがわかりました。しかし、会話が生まれるだけで交流が十分かというとそうではありません。楽しい時間や会話は一時的で、一度きりで終わってしまうこともあります。
楽しく会話していながらも、「このまま一度きりでおわるのかもしれない」という小さな違和感がどこかに残っていました。
けれど、今回のイベントでは、正式なお開きのあとにも、なぜか何人かの会話が続き、関係が残っていきました。その様子にどこか意味を感じ、「会話がうまれたその先」に意識が向きました。
せっかく出会った人たちと、次も会いたい、また話したいと思える関係を築くには何が必要でしょうか。
ここで、新たに「次につながる関係」が重要なテーマとして浮かんできました。
社会心理学やコミュニケーションの研究では、共通の関心や経験を分かち合ったり、何度も顔を合わせたりすることが、人と人の関係を深める手助けになることが分かっています。ただし、こうした研究は実験のように条件を整えた場で行われたものなので、今回の”味噌開き”のような自然な場にそのまま当てはまるわけではありません。
それでも、研究の考え方を参考にしつつ、”味噌開き”の観察から見えてきたことを考えると、関係が深まりやすい条件は次の4つにまとめられそうです。
- 共通の関心・目的がある
同じテーマや関心を持つことで、会話の土台ができる。 - 相手の個性や経験に触れられること
個人的な背景や価値観を少しずつ知ることで、相手に親近感を抱く - 人の介在やサポートがあること
場の空気や流れを整える人がいることで、自然に会話が循環し、互いの関心が引き出される - 交流のための十分な時間や機会があること
短時間では表面的なやり取りに終わるが、時間をかけて話せる機会があれば、距離が縮まりやすい
“味噌開き”に当てはめて考える
「1」の共通の関心は、手作り味噌というテーマそのものでみたされていました。
「2」の個性や経験の共有は、香りや味の違いを通して、自然に引き出されました。
「3」の人の介在は、「ゆみそ」さんの存在が重要です。料理の現場を整えるフードコーディネーターとしての視点と、会話の流れを意識して場を整える編集者的な視点が合わさることで、仕掛けを最大限に活かす場の厚みが生まれます。
「4」の時間についても、作業後に小一時間ほど話し込む人たちがいたことで、短時間では得られない深い会話が生まれました。筆者自身も、その方たちとは「次も会いたい」と感じるつながりを持てました。
お開き後、初対面だったのは自分たちだけで、他の方々はすでに知り合いでした。その状況で、自分たちの会話が自然に続いたのは、共通の関心や経験、場を整える人のさりげない働きかけ、そして十分な時間が揃っていたからです。
知り合い同士は仕掛けが無くても会話が途切れませんが、初対面同士で関係を深めるには、この条件がそろうことが重要だと感じました。
とはいえ、今回の観察から感じたのは、仕掛けだけでは関係を次につなげることは必ずしもできない、ということです。
しかし、具体的にどうすれば関係が自然に深まるかは、まだ完全に明らかではありません。
集まりの後で「まだ話したい」「また会いたい」と思ったことはありませんか?
その時の感覚や気持ちを深く観察することで、自分なりの答えが見えてくるかもしれません。
まとめ
せっかく誰かと出会ったのに、つながりが続くときと、そこで終わってしまうときがあります。
その違いはどこにうまれるのか。
たとえば、
- 近所の寄り合いが続かなかったのは、何が足りなかったのだろう
- 職場で「また話したい」と思える人と、そうでない人の分かれ目はどこにあるのか
- 自分自身は、どんな場だと自然に人と仲良くなれるのか
こうした問いを自分の生活に照らすと、人間関係やコミュニティが「続く」「続かない」というテーマが、少しだけ自分ごとに感じていただけるのではないでしょうか。
店舗情報
店名:みそのわ食堂
住所:名古屋市中区新栄2-2-19 新栄グリーンハイツ1階(コミュニティスペース パルル)
営業時間:毎週月曜日 12:00~15:00
店主「ゆみそ」さんの note
施設情報
名称:コミュニティスペース パルル
団体名:のわ
住所:名古屋市中区新栄2-2-19 新栄グリーンハイツ105
公式Instagram
※活動の最新情報および詳細は、「のわ」の公式サイトでご確認ください。






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